ゲヱム・ヱイジ
小学生の頃、百貨店というのは一年に一度行くか行かないかの場所だった。親が何の用でそこに行っていたのかは未だに分からないが、わしにとっては、おもちゃコーナーへ直行する以外の意味はなかった。
おもちゃコーナーの花形はいうまでもなくゲーム・コーナーの試遊台であった。ただで延々とゲームをさせてくれるのだから、いつまでもテレビゲームを買ってもらえなかった当時のわしにとって、心行くまでゲームに触れることのできる貴重な機会であった。
その頃はちょうどエポック社のカセットビジョンの後継機であるスーパーカセットビジョンが出た頃で、そのときも、二人用のゲームを見知らぬ同年代の少年とプレイしていた。わしにしては珍しいことに初対面なのに気が合ってずいぶんと長い間楽しいプレイを続けたのだが、そこで、
「ねえ、ファミコンって持ってる?」
とわしは聞いてしまった。
わしとしては、ファミコンを持っていないマイノリティとしての寂しさの気持ちを分かち合いたかったのであろうが、彼はぎこちなく、
「いや、持ってなくて……」
と答えるにとどまり、その戸惑いにわしも何も言うことができず、結局、その後数分ほどプレイして二人は分かれたのだった。