Dalzielが死んだ!?

 

ダルジールの死 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ダルジールの死 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 というわけで、ようやく『ダルジールの死』を読了しました。テーマはテロリズムで、イラク派兵がイギリス・ミステリ界にも暗い影を落としていることが伺える内容でした。この作者の悪い(?)癖で、結末はなんとなくグニャグニャしています。「罪は必ずしもこの世で罰を受けるとは限らない」という哲学をお持ちなのか。俗世の司法より神さまの方を信じているのではないでしょうか。
 ところで、タイトルにもあるこのシリーズの主人公の名前であるDalzielですが、
最低の犯罪―英米短編ミステリー名人選集〈8〉 (光文社文庫)

最低の犯罪―英米短編ミステリー名人選集〈8〉 (光文社文庫)

 の解説における木村仁良さんというミステリ研究家の方のご指摘によれば、ダルジールではなく、ディーエルと発音するのだということを最近知りました。これは、十年来のファンからすれば、かなりの衝撃でした。
 最後に印象的な一節を。

 彼は酒を飲み干し、ベッドに戻った。少し眠っておかないと、明日ひどいことになる。それでも眠れなかったので、彼はギデオン聖書を取り上げ、でたらめに開いた。

 神よ、祈るわたしの声をお聞きください。敵の脅威からわたしの命をお守りください。わたしを隠してください、邪悪な人間のひそかな計画から、悪事を行う者たちの暴動から。かれらはその舌を剣のように研ぎ、毒ある言葉を矢のように弓につがえる。隠れたところから罪なき人を射ようと構え、突然射かけて恐れもしないのです。(旧約聖書詩篇」より)

 だが、敵とは誰だ? それに、罪なき人とは誰だ? 彼は自問せずにはいられなかった。