シェトランド諸島の風俗

 

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)

 半年前に読むと言っていた本ですが、最近読了。ずいぶん時間がかかりました。
 面白かったのは、舞台がシェトランド諸島だってことで、これ、若きゴフマン先生がフィールドワークに行ったところですよね。
 いろいろ誤解していたのですが、伝記や解説書なんかでは、シェトランド諸島の「原住民」とか書いてあるから、文明とは無縁の土地で独自の風俗を生きている人々の世界かと思いきや、全然そんなことない。せいぜい、田舎じみている程度のことだと思った*1。ここへフィールドワークへ行く、っていう構図自体に反発したくなったゴフマン先生の心境、分かる気がしてきたなあ。
 それから、シェトランドの年に一度のお祭りの正体がビクトリア朝の頃に発明されたお祭りだってこともちゃんと書いてあったこと、その上で、そんなことは分かった上で盛り上がっている人々という捩れた構図のことも書いてあって、今時のナショナリズムのあり方について考えさせられもしました。
 人物描写はありがちかなと思ったが、唯一、知的障害の老人の内面描写がよかった。内容は、中の上か。最後にちょっと驚くかも。

*1:まあ、50年前と今とは違いますがね。特に海底油田が発掘されて以降は。