その後のディーヴァー

 二年ほど前に、J. ディーヴァー先生サイコーと書いているのだが、実は、その後、

魔術師 (イリュージョニスト)

魔術師 (イリュージョニスト)

獣たちの庭園 (文春文庫)

獣たちの庭園 (文春文庫)

と読んでみて、「ありゃ、もうダメかなこの人」と思ったりしていたのだった。特に、後者なんか、最初から三百ページあたりまでアホみたいな追いかけっこの繰り返しでうんざりして最後まで読めなかった。
 が、先日、決別のつもりで手にした『ウオッチメイカー』
ウォッチメイカー

ウォッチメイカー

が当たり。サイコーとまではいかないが、ディーヴァー先生まだまだ健在だな、と思わせられる出来で、大変満足であった。
 それにしても、ディーヴァー先生はその昔、捜査中でも容赦なく殺人鬼の犯罪を成功させてきたのだったが、最近は、死んだ?と思わせておいて、実は、捜査がうまくいっていて救出成功でしたーというパターンが多用されるようになり、読まされる方は不謹慎にも、「どうせ、生きてるんでしょ」と思いながら、次の章へ読みすすめることが多くなってきた。
 ディーヴァー先生、売れてから、心境の変化でもあったんでしょうか。ベストセラー作家としての社会的責任の自覚でしょうか。あるいは、9.11を境にしての変化のような気もするが(作中でも頻繁に言及される)。
 いずれにしても、血糊ナシでサスペンス効果をあげなきゃいけないとすれば、最終的には、これまでの都市型犯罪ではなくて、クローズドサークルでのスリラーへとシフトしていくことになると思う。
 この予想が外れたら、ディーヴァーは今後百年生き残るだろうが。