滞在中の小説
機内は無論、何かと小説を読む機会の多かった日々であった。
- 作者: ジェイソン・グッドウィン,和爾桃子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/01/24
- メディア: 文庫
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これが時代背景。そこに、近代化の象徴、近衛新軍の仕官4名が失踪し次々に死体として見つかるというナゾがあって、それに宦官の主人公が挑むというスジ。
近代トルコ案内としては良くできているのだけれども、そこに力を入れすぎたために、不自然にぐるぐる各所をめぐるお話になってしまっている。翻訳もところどころ「?」。誤訳はないものと思うが、訳文を軟らかくし過ぎなのではないかと思う。19世紀の人物が喋っているというよりも、今時の若者の会話のように読めてしまい、どうにも気持ちが乗らず。
レッド・スクエア〈上〉 (Mystery paperbacks)
- 作者: マーティン・クルーズスミス,Martin Cruz Smith,棚橋志行
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1994/12
- メディア: 新書
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レッド・スクエア〈下〉 (Mystery paperbacks)
- 作者: マーティン・クルーズスミス,Martin Cruz Smith,棚橋志行
- 出版社/メーカー: 福武書店
- 発売日: 1994/12
- メディア: 新書
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先ずは、批評家の関口苑生氏に感謝を。氏がどこかで、『ゴーリキー・パーク』ばかりが誉めそやされる現状を批判し、シリーズのその後の出来のよさを熱くプッシュしていなければ、『ポーラー・スター』と本作とを手にすることはなかった。
マーティン・クルーズ・スミスの作品は、前半でその文化の固有性をみっちりと緻密に描く。本作では、主人公が、こんな時世になぜ犯罪捜査に執着するかを問われ、犯罪を通してその社会の様々な集団と関われること、一種の「ロシア社会学」(ママ)をやっているとも言えることを理由としている。
しかし、それだけの作家ではない。スミス作品は、クライマックスの中で、様々な社会の様々な集団において、それでも変わらぬ人間の本質を大らかに描き、一種の恍惚境を出現させるのである。モスクワ近郊の山火事に、北極の氷上に、官邸前のバリケードの中に。そして、文体は途端にゆっくりとなり密度を下げる。この完璧な対比こそ、この作家の味なのであろう。