続・極限捜査

 前回は読了後すぐに書き込んだので、いい加減な一口メモしか残せなかった。

極限捜査 (文春文庫)

極限捜査 (文春文庫)

 訳者の村上博基氏には、過去にもル・カレ作品の翻訳などでお世話になってきたが、本作も、体制が強いる緊張した雰囲気の再現は見事というほかない。

 その日、わたしはひとりの男が埋められるのを見た。人間が人間にどこまでできるかを、百年見てきた男だった。わたしはいま、人妻のベッドで涙をこぼしている。人間は人間にそんなこともできるのだ。

 「家には人が住める。家は人を守ってくれる。芸術になにができる。ネストールが壁に絵をかくたび、看守にみつからぬよう、おれたちの誰かが濡れ雑巾で拭いていた」彼は手でテーブルをたたいた。「きれいなものだよ、芸術ってのは。けど、拭けば消えてしまう」