今年の洋ミスについて

 題記の件、ベスト3を挙げるとすると、上から順に、

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

極限捜査 (文春文庫)

極限捜査 (文春文庫)

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)

タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫)

 となるでしょうか。あえて『チャイルド44』は外しました。あざとい展開に後味悪さを感じたのと、すでに「このミス」で1位を獲っている以上こんなちっぽけなブログで称えることもあるまいというのが、主な理由です。また、新潮社様いわく、「次回作はもっと凄い」ということなので、次の作品を見据えてから評価したいという気持ちもあります。

 なんだか、ベスト3選出の積極的な理由よりも、『チャイルド44』を外した理由の方が長くなってしまいました。

 『フロスト気質(上)(下)』はフロスト親父のキャラクターと、終盤の息詰まる展開に、敬意を表して。これを1位にすることは夏に決めてましたが、決心が揺らぐことはありませんでした。

 『極限捜査』はあまり話題になってませんね。『チャイルド44』とほぼ同時期の共産圏の架空の小国を舞台とした硬派な刑事小説です。シリーズはあと3作残っているとのことなので、ヘニング・マンケル同様、次回作あたりでベストに名前を出してくるのではないか、そういう気がします。

 『タンゴステップ(上)(下)』は終始地味ながらも、トータルの完成度で3位に入れました。これも刑事小説。主人公が舌癌を抱えてやや捨て鉢になっている小心な中年男であるところ、と、冒頭の恐ろしく猟奇的な殺人シーンとの対比の面白さが印象に残ります。

 さて、今年読んだものの今年刊行ではなかった作品のうち、印象に残ったものとしては、

ゴーリキー・パーク〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

ゴーリキー・パーク〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

レッド・スクエア〈上〉 (Mystery paperbacks)

レッド・スクエア〈上〉 (Mystery paperbacks)

 のレンコ捜査官のシリーズ。

 それから、P.D.ジェイムズ

死の味〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

死の味〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 SFになっちゃいますが、

終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))

終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))

 を推したいと思います。

 振り返ってみると、今年は、『このミス』20位までの作品の内15作を既読という、相当充実した読書ライフを過ごせたと思います。今後のことを考えると、こんな年は二度とこないでしょう。老境を迎えて再び時間が出来た頃に、同じ無茶をしたいと思います。