最近の読書

 年末〜正月休みに読んだ本。なお、★の数は前回の基準より一個ずつ下げてます。平均が★★で。

 

狂犬は眠らない (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 14-1)

狂犬は眠らない (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 14-1)

 ★★悪くはないがやや冗長だと思う。

 スパイとして働きすぎて頭のいかれた五人組。秘密病院に収容された元CIAメンバーの、ラッセル(音楽をいつも口ずさまずにはいられない)、ゼイン(暑いところにいると発狂する)、ヘイリー(悲観的な思いに常にとらわれている)、エリック(命令形の言葉をきくと必ずそれに従ってしまう)、ヴィク(前触れもなくフリーズしてしまう)らは、病院で起きた医師殺人事件の容疑をかけられてしまう。真犯人を見つけるべく病院を大脱走した彼らの運命は?

 

スリーピング・ドール

スリーピング・ドール

 ★★★佳作、かな。悪くはない。これは中盤がひどく中だるみ。割と凡庸な家族ドラマを見せられるのが残念。

 キャサリン・ダンス―カリフォルニア州捜査局捜査官。人間の所作や表情を読み解く「キネシクス」分析の天才。いかなる嘘も、彼女の眼を逃れることはできない。ある一家を惨殺したカルト指導者ダニエル・ペルが、脱獄、逃走した!捜索チームの指揮をとるのはキャサリン・ダンス捜査官。だが、狡知な頭脳を持つペルは大胆に周到に裏をかき、捜査の手を逃れつづける。鍵を握るのは惨殺事件の唯一の生き残りの少女テレサ。事件について何か秘密を隠しているらしきテレサの心を開かせることができるのは、尋問の天才ダンスしかいない…。ハイスピードで展開される逃亡と追跡。嘘を見破る天才ダンスvs他人をコントロールする天才ペルの頭脳戦。「言葉」を武器に悪と戦うキャサリン・ダンスの活躍を描くジェフリー・ディーヴァーの最新作。ドンデン返しの魔術師の超絶技巧がまたも冴えわたる。

 

 ★★08年度のこのミスの5位だったか6位だったか。フェアな作品なんで、そういうのが好きならば買いだろう。人物造詣も悪くない(けど絶賛するほどでもない)。

 ハードゲート大学の数学講師ピーターは、横領容疑で免職の危機にある亡父の友人ハクストンに助力を乞われた。だが審問の場でハクストンは、教授たちに脅迫めいた言葉を吐いたのち変死する。次いで図書館で殺人が起き、名誉学長暗殺を仄めかす手紙が舞い込む。相次ぐ事件は、ピーターの父を死に追いやった八年前の醜聞が原因なのか。クリスティが絶賛した技巧派が贈る傑作、本邦初訳。

 

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)

 ★★★★今期の一押し。

 ある夜、空から星々が消え、月も消えた。翌朝、太陽は昇ったが、それは贋物だった…。周回軌道上にいた宇宙船が帰還し、乗組員は証言した。地球が一瞬にして暗黒の界面に包まれたあと、彼らは1週間すごしたのだ、と。だがその宇宙船が再突入したのは異変発生の直後だった――地球の時間だけが1億分の1の速度になっていたのだ!ヒューゴー賞受賞、ゼロ年代最高の本格SF。

 で結局、このままでは数十年中に太陽に飲み込まれるので、火星に移住しようというのだが、この前半の山場こそがSF的には一番の読みどころであろう。つまり、地球の1年は地球の外の大よそ1億年なわけで、火星に対する地球からの干渉の結果はすぐに判明するのである。例えば、人間を送り出したら、1年もしたら、1億年後の人類と出会えるわけである。これはかなりワクワクする展開。

 なお、そもそもなぜこんな時間封鎖が起きたのかという究極にして魅力的なナゾが残っているので後半も安心して読んでいただきたい。危機を前にした人間ドラマとしても、読み応えがある。

 不満点は、1億年後の火星の姿があまり見えてこないこと。地球人を圧倒するであろう長大な歴史を少しでも良いので垣間見せてほしかった。

 最後に、原題の"SPIN"がイマイチ何を指しているのか分かりづらいのだが、方々で意訳してくださっているので、お話を理解するのに殆ど苦労しないで済んだ。訳者の方に感謝したい。