ある先生の思い出

pqrs2009-12-31


 昨日、目覚めて暫くぼうとしている間に唐突に思い出したことである。中学、高校と、わたしの恩師であった先生が、我々の授業態度のあまりの悪さに体罰を振るったことがあった。

 ふだん、攻撃的でさえあった左翼的言動にふるまいをする彼、そして、その彼に可愛がってもらっていた自分は少なからずその影響を受けているはずであるけれども――、その彼が、体罰を振るわざるを得なくなるとは、相当なことがあったのだろう。

 それにしても、そのときの彼の言い分が、2009年の年末を迎えようとする頭の中に突然浮かんできたのだった。「わたしは人間に対してはいかなる暴力も振るうつもりは無いけれども、君たちのやっていることは人間以下なのだから、体罰を振るわざるを得ない」。

 今のわたしは、当時の彼よりも六、七歳は年上である。そのことにも不思議な思いがするが、年上の立場から吟味するに、彼の発言ほどに近代の矛盾を凝縮して示したものはないように思える。ほほえましく思う気持ちと戸惑う気持ちと、失望する気持ちと同情する気持ちとが入り混じって、なんとも悩ましい。