黒後家蜘蛛の会とは

 英米圏にはクラブ文化というのがあって、お金に余裕のある知識人階級らがレストランの一部を借りて何かといっては集会を行うようである。黒後家蜘蛛の会というのもその一つで、ニューヨークの某レストランで、六人の男どもにゲスト一名で毎月食事会が開かれるのである。
 そこでゲストは自分の抱えているナゾを語り、六人の会員たちはめいめい適当な推理をしてみせるのだが、面白いのは、そのナゾを解き明かすのがいつもヘンリーという名の控え目で六十過ぎの給仕さんなのである。
 実はこの設定には、元ネタがあって、ミステリファンには言わずもがなだが、それが、アガサ・クリスティによるミス・マープルものの短編集「火曜クラブ」*1である。みんなが集まってやいのやいのと推理をするが、結局はミス・マープルが答えを出して見せるという趣向をまるっとパクッてしまったわけである。無論、黒後家シリーズ同様、こちらもお勧めである。

*1:

火曜クラブ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

火曜クラブ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)