みんながんばっている

 お笑い芸人にM-1というシステムを与えただけで、みんな必死に面白いネタを考える。がんばってネタをつくって売っているという自負がアーティストの雰囲気を与えつつある。芸人としての格好いい生き方という規範も生じつつあるようだ。
 「あの人は格好いい」という評言がなされると同時に、アイドルとはほぼ同格で、役者よりはやや下の位置を得ようとしている。昔、アンガールズサトエリに呼び出されてご飯を食べたとき、本人を前に「顔でかいですね」と伝えたという逸話を聞いたことがある。イエローキャブのレベルならばお笑い芸人と差は無いということか。
 むろん、アイドルはアイドルで、体を見るに値するものとする表現のテクニックを開発していくと同時に、そこに、覚悟を決めたアイドルの格好いい生き方というのも見え隠れするのだけれども、やはり「女優」を上がりとしてその通過点として考える人たちもいるから、なかなか規範が自律しない。
 アーティストになれない芸人は「体を張る」のだが、それも、ガンバルマンとかで二束三文の悲鳴を挙げていた頃とは少し違う空気を帯びてきているのも気になる。体を張ると同時に、体を張ってみせるという決意をも一緒に見せているような気がする。十メートルの飛び込み台から一秒も躊躇せずに飛ぶ芸人などを見る視聴者の気持ちというのは、情けなくて笑うというよりは、凄いなあと安心して笑うといった感覚に近いようだ。