階級の公言

 妙に頭に引っかかる……

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

 第四章で、二回、学者が社会分析に階級の変数を投入しようとして、官僚にたしなめられる逸話が出てくる。官僚組織においては、階級は「禁句」であり、階級差を認めての分析を公表することはできないのだそうだ。
 「我々の社会を(一部)規定するもの、それは階級である」。こういった途端にマスコミが大挙して押し寄せることを官僚らは想定していて、その想定は何となく正しいと思うのだが、さて、「押し寄せて何に困るのか(=どういう事態を危惧しているのか)」と考えを進めると分からなくなってしまう。
 先ず、マスコミは何を論じるべく(=何を問題視して批判するべく)集まるのか。次に、官僚は、どういう事態をシミュレートしているのか。
 漠然としたことしかいえないが、官僚は、階級について公言した途端に、政策の方針を判断する主導権を世論の側が握りかねない事態について考えているのだ、とは思う。