やっぱりミステリはイギリスに限る

 レジナルド・ヒルにはSEをやっていた頃、少しハマっていたことがあったのだが、

ベウラの頂―ダルジール警視シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ベウラの頂―ダルジール警視シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 コイツについては、その分厚さに恐れをなして積読になってしまっていた。最近、村上貴史編『名探偵ベスト100』を読んで、これが「最高傑作」と激賞されているのをみて、数年ぶりに読んだ。
 ……良い。しみじみ良い。酒席で酔いがめぐりすぎる少し前の、ほろ苦くも心地よくもある自己内省にふけるがごとき、適度に暗いミステリであった。緊密に張り巡らされた主題の深さの余り、仕掛けられた罠の技巧がかすんでしまうのだが、どちらも軽々と同時代の作品群の水準を抜いていると思う。
 ただ納得がいかないのは、コレが、このミス(海外編)とかに全然ランクインしていないんだけれども、なぜなんだろう、ということ。
 思うに、国内編がメジャー作品に迎合しすぎるクセがあるのに対して、海外編はすれっからしのマニアの意向を反映しすぎているのではないだろうか。数年前にランクしていた、映画のミステリ(タイトル忘れた)とか、神は銃弾とか、半身とか、全然分かんなかったものなあ、良さが。
 結局、昨今の海外ミステリ不況なんかの原因もそういうところにありそう。ライトユーザー層を国内ミステリに全部持っていかれちゃっている。啓蒙しよう。啓蒙。