馳星周と道徳律

 この前の更新以来、馳星周を何冊か読んだ。

夜光虫 (角川文庫)

夜光虫 (角川文庫)

漂流街 (徳間文庫)

漂流街 (徳間文庫)

ダーク・ムーン 上 (集英社文庫)

ダーク・ムーン 上 (集英社文庫)

マンゴー・レイン (角川文庫)

マンゴー・レイン (角川文庫)

長恨歌―不夜城完結編

長恨歌―不夜城完結編

 
 主人公はどいつもこいつもダメ人間である。三歳児なみに自分の感情をコントロールできない連中ばかりだ。


 それから、単に幼稚な感情の吐露にすぎないものを過剰な暴力という形で噴出させるからわかりにくくなるのだが、こういう感情のダダ漏れぷりというのは、例えば、あるひとを好きになって「あのひとは自分のことを好きなのかどうなのか」とクヨクヨと悩んだ挙句、脈がないと分かると誰彼かまわず愚痴をこぼし、その間、仕事という仕事が手につかないという典型的なボンクラ人間のそれである。こんなのはどこにでもいる心の弱い人間であって、わたしもその一人である。


 なんでこんなことを書いたかというと、最後に挙げた長恨歌を一気に読んで(一気読みするぐらい面白かった)、途中頭に浮かんだのが、なぜか『冬物語』のズルズル浪人し続けるダメ主人公の姿だったからである。わたしはあのマンガの甘さが大嫌いだったのだが、馳はそういうダメ人間に対しては、物理法則にも似た厳格な報いを与えるのみである。それは法則であるので何度でも与え続けられるだろう。なんと道徳的なのか!