搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

 読了した。狙いの明確な良書であると確信した。というわけで、某少子化論の先生にならってアマゾン批評の批評をしてみよう。

格差論議に便乗した一冊, 2006/10/20
レビュアー: よしいち (兵庫県) - レビューをすべて見る
社会学の分野では、このようなフィールドワークの報告書がしばしば量産されますが、そこに深い洞察や新たな知見が見いだされることは多くありません。本書は分量的にも内容的にもきわめて薄く、誰もが思いつきそうな内容を体験記風にまとめ上げたものにとどまっています。著者は東大の院生だそうですが、このようなレベルのものが本として出版されてしまうところに、東大社会学の権勢を感じます。

 典型的な後出しじゃんけん批評。このようなレベルのものが批評として掲載されてしまうところに、アマゾンの恐ろしさを感じます。以上。

このネタでなぜ、つまらない本になるのか?, 2006/10/21
レビュアー: ゲルニカ (日本国) - レビューをすべて見る
メッセンジャーと並び、一人親方の典型であるバイク便業界に一年身を置いての論考が、どうしてこれほど内容が薄いのか?
厳しい労働条件にもかかわらず、ワーカホリック状態に自ら入っていく心理状況の変遷を書いている、というのがせめてもの救い。
バイク便の労働者がどれほど厳しい労働条件に置かれているのか、具体的な状況が全然見えてこない。
せめて聞き取り調査で同僚たちの具体的な家計状況、家庭を訪問しての生活実態調査、ケガをしたライダーへの聞き取りなど、できることはいくらでもあったはず。
一年間も働いていて、感想文程度のものしか書けていない、という印象だ。
会社側の声も欲しかった。
ところどころにさしはさまれる筆者の気取り気味のモノローグは全く不要。
ただし、タイトルとカバー見返し部分の内容紹介は、よくできていると思う。
編集者の仕事のたまものとは思うが、本文をもう2、3回全面的に書き直すなり、追加調査を要求してほしかった。

 さっきのよしいちとかいうバカよりはまともなことも言っている。話の掘り下げ方が具体的に例示されており、この点には同意できる。ただ、筆者の問題関心が全くもって把握できていないから、その助言も説得力のないものになっている。
 先ず、「心理状況の変遷」とあるが、多少ナリとも読解力のある読者であれば、本書のキモがそういう心理状況を生み出す職場の客観的テクノロジの記述の方にあることは明白だろう。
 それから、もう少し根本的なことを言えば、この人には、この新書が誰に向けて書かれているのかということが分かってない。
 専門的な分析が読みたいのであれば、著者がわざわざ巻末で指示している専門論文を読めばよいだけの話である。
 そうではなくて、この本は、バイク便ライダーもしくはライダー予備軍に向けられたメッセージなのであるから、メッセージとは関連の薄い部分の分析が手薄くなるのは仕方のないことではないか。むしろ、メッセージ性を明確化するために、評者のような高学歴(のワリには頭が悪いが)の読み手が喜びそうな厚みを削いでいるという著者の配慮がなぜ分からないのだろうか。
 こんな視野狭窄の批評に邪魔されて、著者のメッセージが当人らに届かないのだとしたら――往々にして世の中はそういうものだが――、なんともやり切れない。