プライベートアイはお喋り好き

 

八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫)

八百万の死にざま (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 アル中探偵スカダーシリーズ中の出世作なのだが。これが何と言うか。
 ちょっと過去を持っている探偵さんがいろいろな人の話を聞いて回るのだな。その会話の中で時折、気の利いたやりとりや物の見方なんかがあって、なるほどと思わせられる。そんなことを続けているうちに、大した山場もないまま事件が解決していたので驚いた。誰が犯人だったっけ?
 こんなことを言ったものの決して貶しているのではなくて、テンションの低いお喋りの繰り返しの中で何となく人生のニュアンスを伝えるという手法なのであろう。なんというか、やはりこれは、一人で酒を呑むような孤独な人にとっては幸福な世界観なのだろう。少しだけ分かる。