久しぶりにミステリ

 

女刑事の死 (ハヤカワ文庫 HM (309-1))

女刑事の死 (ハヤカワ文庫 HM (309-1))

 学部の頃も面白く感じたものだが、最近再読して、あまりの面白さにびっくりした。
 言うまでもなくロス・トーマスはうまい。

  • 一つ一つのシーンに人間的興味をそそるくすぐりが混じっている。
  • 日常生活の中に世界情勢がそ知らぬ顔して入ってくるのにも驚かされる。
  • あと、ホラ話がうますぎる。架空の田舎町が舞台で、その町の様々なエピソードがところどころに挿入されるのだが、どれもこれもすべてフィクションなのだとしたら、トーマス氏は頭がおかしいと言わざるを得ない。

 そしてまた、訳者の藤本和子さんがうまい。よく存じない方だが、ニュアンスが適切に訳されているのであろうという絶対的な安心感がある。作家と一体化しているといってよい。
 いつまでも読んでいたい。そう思わせられる一冊である。