ロラン・バルト

 彼の(社会学者にとっての)最高傑作はエッセイの中にあり、とりわけ「現代社会の神話」の中にある。

現代社会の神話―1957 (ロラン・バルト著作集 3)

現代社会の神話―1957 (ロラン・バルト著作集 3)

 疑われる向きは、だまされたと思って最初の数ページに展開されるプロレスについての分析を読まれよ。
 彼はあまりに鋭かったので文化研究者らは無理やりに批判し倒さざるを得なかった。そのために、彼の思想から社会学的エッセンスを汲み取るチャンスは失われてしまったように思う。
 確かに体系性はない。というか、体系を目指した作品はむしろ社会学的には時代遅れになってしまっている。しかし、彼がエッセイ中で一段落ごとに閃かせる知恵と渉りあえるのは、社会学の分野では、アドルノかゴフマンぐらいしかいなかったのではないか。