ブラッド・ミュージック

 

ブラッド・ミュージック  (ハヤカワ文庫SF)

ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)

 SFの名作にチャレンジ第1回は細胞がどうこうして世界がどうこうしてしまうブラッド・ミュージック。ミクロネタの最初のものということだそうなので、既視感があるのは割り引いて考えなければならない。
 そういうことで興奮はあまりなかったのだけれど、P.D.Jよりはリーダビリティは高かった。
 あと痛感したのは、訳者も触れているけれど、ここで起きることは全く新しい出来事であって、「大変化」であり、我々の知性をとうに超越した理屈で動いているはずのことなんだけれども、そういうのを我々の既成のコトバで表現しなくてはならんということだね。
 で、そういうコトバというのが、形や色のグロテスクぷりを表現するだけならそれは人間から見た異物の話に過ぎんし、何か知らんがみんな幸せなんだという感情であれば、ありきたりなユートピア話になってしまう。外から記述してもありきたり、中から記述しても陳腐というんではSFって大変だな、と同情したのだった。