終りなき戦い

 

終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))

終りなき戦い (ハヤカワ文庫 SF (634))

 SFの名作に挑戦の第2回は『終りなき戦い』。本当に「終りなき」で、本人的には数年の従軍なんだけれど、何回も光速レベルで移動するので地球的には1000年になってしまっているのである。
 1年ぐらい戦って帰ってきたら数十年経ってて、また行って帰ってきたら200年経ってて、最後は1000年経っていたという。
 で、その間に、最初は英雄扱いだったのが、最終的には「なんでこんな意味のない戦争に行ってたの?」的な扱いを受けていて、オレは読みながら義憤を感じたのだが、主人公は「まあいいや、戦争に行かないですむのなら」とすごく冷めてたのが印象的だった。ここら辺の諦めなどは、著者のベトナム戦争従軍経験が反映されているところかもしれない。

 あと、恒星間戦争ってのには根本的にムリがあると思った。数百年かけて戦いに行く人間にとって、その大義となるはずの守るべき故郷は、その間に全然違うものになってしまってるわけだから。そうなると、戦ってる人間も「何やってるんだオレ」的になってくるので、この小説、やたらと薬物が出てくる。人間的にムリが生じそうなところには絶対クスリが出てきて解決。最初から最後まで薬漬け。
 これがこの小説の二番目のテーマで、一番ムリをきかせられるのは制度じゃなくて人間である、ということ。制度を見直すぐらいなら、人間を薬漬けにしてしまう方が簡単なんだ。