最近のミステリ

 やっぱり長いものがなかなか読めなくなってきた。

度胸 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-5 競馬シリーズ)

度胸 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-5 競馬シリーズ)

 ディック=フランシスの競馬シリーズ。悪役がすげえ悪い奴と評判だったので読んでみる。確かに悪い。悪すぎる。
 そして、それに抗する主人公の乗馬シーンが胸が熱くなるほどよい。すばらしい馬に対するフランシスの深い敬愛の念がひしひし伝わってくる。こういったところなどは、元競馬騎手にしか書けないし、しかし、競馬騎手だった者が簡単に書けるものでもないのだろう。
ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ベスト・アメリカン・ミステリ ハーレム・ノクターン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 アメリカではその年の最も優れたミステリの短編集が出版されているのだが、こういうところなどは本当にうらやましいと思う。日本ではなぜそれが出来ないのだろう。
 で、2002年のベストを集めたこれなのだが、いやー、面白い。ゲスト・エディターにエルロイ先生を迎えて、エルロイ魂を感じさせる傑作がずらりと並んでいる。冒頭の優れたメキシコ異郷モノを堪能し、M. コナリー、T.クックの語り口の名人芸を堪能し*1、たまたま階下で殺人事件が起きた男のクソッタレな人生を苦々しい思いで読み終わったところである。
 すでにハヤカワで5冊出ているので、今後しばらくは、これだけで時間がすごせそうである。

*1:クックでは不覚にも泣いてしまった。単純なスジなのに悔しい