よしなしごと

 1)

 自由意志と法則という古典的問題を基礎に置きつつ、優れた歴史家たちの歴史観と語り口とを巧みにアレンジして用いるので飽きさせない。あっぱれでした。


 2)
 以前、私の関わったある調査で、「わたしは弱者である」「あの人は弱者である」などの弱者の定義というのが、発言者の立ち位置によってずいぶん異なることを知って、面白いなと思ったことがある。現代社会において、弱者であることのレッテルというのは一種の強みであるから、力を持つ者は、自称者の弱者定義を認めず、力のない者は、自らが弱者であることを承認させようと必死である。

 問題1:弱者であることが強みでもあるというのは、近代のいかなる性質によることなのか。
 問題2:弱者の定義戦争というのがあるとして、そのような場はどこに設けられているのか。
 問題3:弱者であることの定義戦争にすら参入し得ていない人々がいること。本来の意味で弱者なのだが、弱者であることが分かりにくくなっている人々もいるだろう、ということ。
 問題4:自らが弱者であると定義する人は、どういう行為のパターンを採用するのか。あるいは、させられるのか。